はじめに
野球において、投手の投げ方はその選手の個性や戦略に大きな影響を与えます。
その中でも、非常に珍しく目を引くのが「アンダースロー」と呼ばれる投球フォームです。
独特な動作でボールをリリースするため、打者のタイミングを外したり、思い通りのピッチングを実現するためのひとつの手段となります。
しかし、アンダースローはメリットばかりではありません。
球速が出にくい、制球が難しいなど、デメリットも存在します。
本記事では、アンダースローの特徴や利点・欠点をバランスよく解説し、どんな選手に向いているのか、どのように練習すればよいかまで詳しく紹介します。
アンダースローとは?どんな投げ方?
東京六大学野球の東大のエース、渡辺向輝投手がプロ志望届の提出を決断した。父はプロ野球ロッテで活躍した俊介さん。投球フォームも同じアンダースローだ。険しい道のりを覚悟しつつ「できることをやるだけ。最後までやり切りたい」。東大から7人目となるプロ入りを目指す。 https://t.co/agczLjEKBq
— 時事通信スポーツ (@jijisports) July 1, 2025
アンダースローとは、地面に近い位置から腕を振り、横または下からボールをリリースする投球フォームのことです。
スリークォーターやサイドスローよりもさらにリリースポイントが低く、独特な軌道を描くボールを投げることが特徴です。
特徴と投球フォームの違い
このフォームでは、体を横に大きくひねり、下半身をしっかり使って投げる必要があります。
オーバースローと比べて肩やひじの負担が少ないと言われていますが、その分、腰や背中への負担が増す場合もあります。
体幹の強さや柔軟性が求められるフォームといえるでしょう。
また、リリースポイントが低いため、ボールの軌道が横や下から浮き上がってくるように見える場合があり、打者の目線を外すことができます。
日本人選手に多い?代表的な投手例
アンダースローといえば、かつて千葉ロッテマリーンズで活躍した「渡辺俊介」投手が有名です。
彼は“和製サブマリン”と称されるほど、低いリリースポイントから繰り出す投球で多くの打者を抑えました。
また、プロではあまり見かけないものの、アマチュア野球や草野球では意外と多くの選手がアンダースローを取り入れています。
球速だけに頼らず、工夫と制球で勝負するスタイルが魅力です。
アンダースローのメリット
アンダースローには、他の投球フォームにはない大きなメリットがあります。ここでは主な利点を3つ紹介します。
バッターから打ちにくい球筋
アンダースローで投げられたボールは、打者にとって非常に見づらい軌道になります。
リリースポイントが低いため、横または斜め下から浮き上がるような変化を見せることがあり、通常のオーバースローに慣れている打者はタイミングを外しやすくなります。
特に左バッターに対しては外角に逃げていくような変化球が有効で、凡打を誘いやすくなります。
打球がゴロになりやすい
アンダースローの投球は自然と低めに集まりやすく、打者の打球がフライよりもゴロになりやすい傾向があります。
ゴロであれば内野陣によってアウトを取りやすく、ピッチャーにとっては非常に効率的です。
内野の守備力が高いチームでは特に相性が良く、テンポのよい守備が可能になります。
肩やひじの負担が比較的少ない
オーバースローやスリークォーターでは肩に大きな負荷がかかることがありますが、アンダースローは横方向の動きが中心のため、肩やひじの負担を軽減できるとされています。
特に肩に不安を抱える投手や、ケガからの復帰を目指す選手にとっては、有効な選択肢となりえます。
アンダースローのデメリット
一方で、アンダースローには明確なデメリットも存在します。フォームの特性上、誰にでも向いているとは言えません。
球速が出にくい
最大の難点のひとつが、球速が出にくいことです。
リリースポイントが低いため、腕の振りでボールに強い力を伝えることが難しくなります。
結果として、オーバースローで投げた時よりも10〜20km/hほど遅くなるケースもあります。
球速に頼るタイプの投手や、スピードで押し切るスタイルには不向きです。
制球が難しいフォーム
アンダースローは体全体をひねって投げるフォームのため、再現性が低くなりがちです。
そのため、思い通りにコントロールすることが難しく、四死球が増えてしまうリスクもあります。
特にピッチング技術が未熟な選手や、フォームを安定させる段階の投手には課題となることが多いです。
育成・指導者が少ない
日本ではオーバースローが主流のため、アンダースローを専門的に指導できるコーチが少ないという現実があります。
自己流でフォームを作る選手も多く、正しい体の使い方を身につけるには相当な工夫と時間が必要です。
指導環境が整っていない場合、かえってフォームを崩してしまうこともあるため注意が必要です。
アンダースローのメリット・デメリット比較表
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
打者への影響 | 打ちづらい軌道でタイミングを外せる | 慣れた打者には通用しづらい |
打球の傾向 | ゴロが多く守備でアウトを取りやすい | フライや長打を打たれるリスクもある |
肉体的負担 | 肩・ひじの負担が少ない | 腰や体幹に負担が集中する場合がある |
球速・球威 | 球速に頼らず変化球で勝負できる | 球速が出にくくスピード勝負には不向き |
指導・育成環境 | 個性を活かした投球スタイルができる | 専門の指導者が少なく自己流になりがち |
どんなタイプの選手に向いている?
アンダースローは決して万能ではありませんが、適したタイプの選手が取り入れることで大きな武器になります。
制球力より“工夫”で勝負したい投手に
パワーピッチャーのように速球で押すよりも、変化球や配球の工夫で勝負したいタイプの投手にとって、アンダースローは魅力的な選択肢です。
打者にとっては見慣れない球筋になるため、タイミングを外しやすくなります。
ケガ予防を意識したい投手にもおすすめ
肩やひじの負担が少ない点から、怪我予防の観点でもアンダースローは注目されています。
特に高校生や大学生など、成長期の選手が長く野球を続けるための手段として活用することもできます。
ただし、全身を使ったフォームであるため、腰や体幹のケアは欠かせません。
アンダースローを成功させるためのコツ
アンダースローを身につけるには、単にフォームを真似るだけでは不十分です。
自分の体に合った形を見つけるために、以下のようなポイントを意識しましょう。
下半身の安定と柔軟性がカギ
アンダースローでは、低い重心でバランスを保つことが重要です。体幹や股関節の柔軟性が不足していると、フォームが崩れてしまいがちです。
日頃からスクワットやストレッチなどで下半身を強化しておきましょう。
また、体重移動がスムーズにできるようになると、制球も安定してきます。
自分の武器を理解しよう
アンダースローの最大の強みは「他にはない投球スタイル」です。
変化球の切れやコントロールに磨きをかけることで、打者との勝負に勝つことができます。
球速が出にくいからこそ、自分の強みを理解し、変化球や配球の工夫に力を入れると良いでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 子どもにアンダースローを教えても大丈夫?
A. 成長期の子どもでも、無理のない範囲であれば問題ありません。
ただし、正しいフォームやトレーニング指導ができる大人のサポートが重要です。腰や股関節への負担を軽減する工夫も必要です。
Q. アンダースローでプロになれる?
A. 実際にプロで活躍した選手は存在します。ただし、全体の中では非常に少数派です。
球速や派手な投球が注目されがちな現代野球においては、アンダースローは“武器”として活かすために、卓越した変化球や制球力が求められます。
まとめ
アンダースローは、他のフォームにはない独特な特徴を持つ投球スタイルです。
打者のタイミングを外しやすく、肩への負担が少ないというメリットがある一方で、球速の面や育成環境などのデメリットも存在します。
大切なのは、自分の身体やプレースタイルに合ったフォームかどうかを見極めること。
正しいトレーニングと工夫を重ねれば、アンダースローはあなたにとって唯一無二の武器になるかもしれません。
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